桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

1. 桜ノ丘の夜
   桜ノ丘の頂上に、静かな夜が訪れていた。
 夕暮れのオレンジ色から、夜の深い藍色へと移り変わる空。
 街の明かりが遠くに輝き、静寂の中に虫の声だけが響く。
「……夜になると、また違う雰囲気だな。」
 基翔が、遠くの街並みを見ながら呟いた。
「達也は、こんな夜の景色を見たかったのかもね。」
 智香が、桜の木にそっと触れる。
「私たちがここに来たこと……達也も喜んでくれるかな。」
「きっとな。」
 将貴が、微笑んで頷いた。
「俺たちは、ようやく過去と向き合えた。……それだけで十分だろう。」

2. それぞれの誓い
   丘の上で、彼らは静かに佇んでいた。
「なあ。」
 泰亮が、不意に口を開く。
「これから、俺たちはどうする?」
 その問いに、全員が考え込んだ。
「俺たちは、10年間も"止まったまま"だった。」
 将貴が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「でも、もう過去に縛られる必要はない。……これからのことを考えよう。」
「これからのこと……。」
 純鈴が、小さく呟いた。
「私は……もう後悔しない生き方をしたい。」
「うん……私も。」
 美耶が頷く。
「10年前の事故は、私たちにとって辛いことだった。でも、それを"なかったこと"にするんじゃなくて、それを受け入れて、前に進む。」
「それが、俺たちにできることだよな。」
 基翔が、少し笑いながら言った。
「先生も、そう言ってたし。」

3. それぞれの道を進むために
  「俺は、もう逃げない。」
 将貴が、静かに宣言した。
「俺は、仕事ばかりに没頭して、過去を見ないふりをしていた。でも、それは違った。……俺は、過去と向き合って、その上で前に進みたい。」
 智香は、彼の言葉をじっと聞いていた。
「私は……これから、自分の気持ちに素直に生きる。」
「素直に?」
「うん。」
 智香は、桜の葉が舞うのを見つめながら微笑んだ。
「私は、編集者の仕事を続けながら、人に想いを伝える文章を書きたいって思うようになったの。」
「文章?」
「うん。これまでずっと、言葉にするのが怖かった。でも、今は違う。……だから、書く。」
 彼女の目には、確かな決意が宿っていた。

4. 過去を胸に、未来へ
  「俺は……俺らしく生きる。」
 泰亮が、腕を組みながら言った。
「これまでは、"正しさ"に囚われてた。でも、それじゃダメだって気づいたからな。」
「私も。」
 純鈴が微笑む。
「10年間、私は"こうあるべき"って考えてばかりだった。でも、本当に大切なのは"どう生きたいか"なんだって、ようやく気づいた。」
「俺たちは、また前に進める。」
 基翔が、しみじみと呟いた。
「これまでの時間を取り戻すことはできない。でも、これからの時間は、自分たちで作っていける。」
「そうだな。」
 将貴が、ゆっくりと頷いた。
「それぞれの道を進もう。でも、俺たちはもう、バラバラにはならない。」
「うん。」
 智香が、優しく微笑む。
「これからは、それぞれの道を歩きながら、支え合える関係でいられるよね。」
「当然だろ。」
 泰亮が、笑いながら言った。
「……じゃあ、誓おうぜ。」
「誓う?」
「そうだ。」
 泰亮は、桜の木に手を当てる。
「これから、それぞれの道を生きる。でも、また必ずここに集まる。」
「……それ、いいな。」
 基翔が頷く。
「約束しよう。」
「うん。」
 美耶も、そっと手を添える。
「私たちは、もう離れない。」
「どんなに時間が経っても、またここに集まる。」
 将貴が、静かに言う。
「それが、俺たちの"未来への誓い"だ。」

5. 未来へ向かって
   彼らは、桜の木の下で静かに手を合わせた。
 ——それぞれの未来へ進むために。
 ——そして、またここで再会するために。
 桜の葉が舞い落ちる。
 彼らは、それぞれの人生へと歩き出す決意を固めた。
(第14章・終)