桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

4. 智香の答え
   智香は、目を伏せた。
「……私も。」
 小さな声だった。
「私も……将貴のことが好きだった。」
「え……?」
 将貴が驚いた表情を浮かべる。
「でも、私も言えなかった……。達也が事故に遭ってしまったから……。」
 智香の目から、涙がこぼれる。
「私は、達也のことが大切だった。でも、"好き"っていう気持ちとは、違ったのかもしれない。」
「……。」
「だけど、達也を失ったことで、自分の気持ちを見つめることができなかった……。」
 彼女は、桜の木に手を当てる。
「私は、達也が好きだった。でも、将貴のことは……もっと違う形で、特別だったのかもしれない。」
「智香……。」
 将貴は、彼女の涙を静かに見つめる。
「……だから、私は、10年越しにようやく言える。」
 彼女は、将貴の目を真っ直ぐに見つめた。
「私は、将貴が好き。」