桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

5. 達也の代わりに
   彼らは、丘の上に立ち、目の前に広がる景色を眺めた。
「達也は、この景色を見たかったんだな……。」
 将貴が、静かに呟く。
「だけど、達也はここに来ることができなかった。」
「でも……。」
 智香が、そっと目を閉じる。
「私たちが、ここにいる。」
 彼らは、達也の代わりに、この景色を見ていた。
 そして、達也が果たせなかった約束を、彼らが引き継いでいた。
「達也……。」
 智香は、そっと桜の木に触れた。
「あなたの見たかった景色、ちゃんと見てきたよ。」
 風が吹き抜け、桜の葉が舞う。
 まるで、達也がそこにいるかのように——。
(第11章・終)