桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

5. 先生の最期の言葉
   彼らが覚悟を決めたその時——
「……先生?」
 将貴が、違和感を覚えて先生の顔を見た。
 彼の呼吸が、微かに弱まっている。
「先生、大丈夫ですか!?」
 智香が、慌てて先生の手を握る。
 しかし、先生は穏やかに微笑んだままだった。
「……私は、もう十分だ。」
 彼は、ゆっくりと息を吸い込むと、最後に言葉を紡いだ。
「お前たちは、もう……大丈夫だな。」
「先生、そんなこと言わないでください……!」
 純鈴が泣きながら訴える。
「俺たち、先生にまだ何も……!」
「いや……。」
 先生は、静かに首を振る。
「お前たちは、私の誇りだ。」
 その言葉とともに、先生の目がゆっくりと閉じられた。
「先生……!?」
 誰もが、言葉を失った。
 しかし、彼の顔は穏やかだった。
 まるで、ずっと彼らを見守るように。
「……ありがとう、先生。」
 将貴が、そっと先生の手を握る。
「先生の願い……俺たちが、必ず叶えます。」
 その言葉が、静かな病室に響いた。
 ——彼らは、次の目的地へ向かうことを決意する。
 "達也が最後に行きたかった場所"へと。
(第9章・終)