桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

2. 村瀬先生の言葉
   病院に戻り、彼らは村瀬先生の病室を訪れた。
「先生、俺たち……事故のことを全部知りました。」
 将貴が代表して伝える。
「そして……やっと、受け止める決心がつきました。」
 先生は、弱々しく微笑んだ。
「そうか……それを聞いて、私は本当に安心したよ。」
「先生……僕たちは、何をすればいいんでしょうか?」
 智香が、おそるおそる問いかける。
 先生は目を閉じ、静かに言った。
「……お前たちには、今までとは違う視点で過去を見てほしい。」
「違う視点?」
「そうだ。」
 先生はゆっくりと目を開ける。
「今までは、"あの事故があったせいで"と考えてきたかもしれない。でも、これからは、"あの事故があったからこそ"と考えてみてほしい。」
「……?」
「過去の出来事をどう捉えるかは、お前たち次第だ。事故を"悲劇"として終わらせるのか、それとも"意味のある出来事"だったと考えるのか。」
 彼の言葉に、全員が息をのんだ。
「……"あの事故があったからこそ"?」
 泰亮が、慎重に言葉を繰り返す。
「どういうことですか?」
 先生は、少しだけ微笑んだ。
「お前たちがこうして再び集まり、過去と向き合うことができたのも、事故があったからだろう?」
 その言葉に、全員がはっとする。
「もし、事故がなかったら……お前たちは、何も考えずにそれぞれの人生を歩んでいたかもしれない。」
「……確かに。」
 基翔が頷く。
「俺たちは、この事故のことを考え続けることで、過去に縛られていた。でも、逆に言えば、それがあったからこそ……俺たちは、ここでこうして向き合うことができた。」
「そうだ。」
 先生は、優しく微笑んだ。
「過去を変えることはできない。しかし、"過去の意味"を変えることはできる。お前たちは、それができるはずだ。」