桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

1. 病院への帰路
 
 夕陽が傾き、空は茜色に染まっていた。
 体育館での話を終えた彼らは、再び病院へ向かっていた。
 タクシーの中では、誰もが無言だった。
 だが、それは気まずさではなかった。
 ——過去を受け入れようとしている証だった。
 それぞれが、自分の中で整理をつけようとしている。
 事故が誰かの責任ではなく、偶然が重なった結果だったこと。
 そして、彼らはそれをずっと誤解していたこと。
「……なんか、変な感じだな。」
 泰亮が窓の外を見つめながら呟く。
「何が?」
 基翔が問いかける。
「こんなに長い間、誰が悪いのかを探してたのに、結局、誰も悪くなかったってことがさ。」
 彼の言葉に、智香が静かに頷いた。
「……だからこそ、向き合うのが難しいのかもね。」
「どういうこと?」
 純鈴が眉を寄せる。
「誰かが悪いなら、その人を責めればよかった。でも、悪者がいないなら、私たちはただ"受け入れる"しかない。でも、それってすごく難しいことだと思うの。」
 その言葉に、誰もが深く頷いた。
 10年間、彼らは誰かを責めることで楽になろうとしていた。
 しかし、その方法はもう使えない。
 ならば、これからは——"どう過去と向き合うのか"を考えなければならない。