桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

5. 信頼の崩壊
  「……お前は結局、自分が悪いんじゃなくて、"誰も責めたくない"ってだけなんだろ?」
 泰亮の声には、冷たい怒りが滲んでいた。
「そうやって、お前だけ"いいやつ"でいようとしてるんだ。」
「違う……!」
「違わねぇよ!」
 泰亮は机を叩いた。
「俺はな、"正しいこと"が知りたかったんだよ!」
「達也がこうなったのに、誰も悪くないなんてありえないだろ!」
「……もういいよ。」
 そのとき、静かに立ち上がったのが智香だった。
「これ以上、誰かを責めても仕方ない。」
「智香、お前——」
「……私は、ただ、達也にもう一度会いたいだけなのに。」
 彼女の目から涙がこぼれた。
 その瞬間、誰もが何かを言えなくなった。
 そして——彼らは、そのままバラバラになった。