桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

3. 消えない過去の傷
 
 手紙を握りしめたまま、将貴は窓の外を見つめた。都会のネオンが冷たく光る。
 ——行くべきなのか?
 先生がどんな状態なのかはわからない。だが、わざわざ彼に直接手紙を送ってきたということは、よほどのことなのだろう。
 「……行くのか?」
 無意識に携帯を開く。SNSの検索欄に、「村瀬誠司」と打ち込む。
 だが、そこで止まった。
 その名前の下に、関連ワードとして出てきたのは——「智香」だった。
 将貴の指が止まる。
 智香——彼と同じクラスだった少女。
 彼女もまた、10年前の事故を境に、彼の前から姿を消した。
 いや、違う。
 将貴が、彼女との関係を断ち切ったのだ。