桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

1. 10年ぶりの母校
   彼らはタクシーを降り、静かに校門を見上げた。
 母校——あの事故が起きた高校。
 10年ぶりの風景は、驚くほど変わっていなかった。
 正門の隣には校訓が刻まれた看板があり、校舎の壁には相変わらず年月の染みが残っている。
 それなのに、彼らの胸には言い知れぬ違和感があった。
「……懐かしいな。」
 基翔がぽつりと呟く。
「そうだね。でも、なんだか胸が締めつけられる。」
 智香の声には、わずかに震えがあった。
「俺たちが最後にここを歩いたのは、10年前のあの日だったな。」
 泰亮が、校舎の方を見ながら言った。
「事故が起きた日、俺たちはこの校門を出て、それ以来戻ってこなかった。」
 その言葉に、全員が静かに頷く。
 ——あの日を境に、彼らはこの場所から心を切り離していた。
「……行こう。」
 将貴が先頭を切り、歩き出した。
 10年越しに、"あの場所"へと足を踏み入れるために。