桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

2. 先生の変わり果てた姿
 
 扉を開けると、村瀬先生がベッドの上に座っていた。
 しかし、その姿は彼らが知る先生とは違っていた。
 痩せ細り、顔色は青白い。
 あの堂々とした姿はなく、か細い身体がシーツに沈んでいる。
「先生……。」
 美耶が小さく呟いた。
 先生は、それでも微笑んだ。
「よく来たな。」
 それは、10年前と変わらない優しい声だった。
 彼らは、先生のベッドの周りに立ち、言葉を失っていた。
 誰もが、何を話すべきかわからなかった。
「……先生、」
 将貴が口を開いた。
「手紙で、俺たちに伝えたいことがあるって書いてましたよね?」
 先生は、ゆっくりと目を閉じ、そして再び開いた。
「そうだ……お前たちに、どうしても伝えなければならないことがある。」