桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

3. 崩れた舞台
 
 文化祭当日、午後2時。
 本番直前、体育館のステージ裏でスタッフたちが最後の準備をしていた。
「ねえ、このセット、大丈夫?」
 美耶が不安そうに基翔に話しかける。
「昨日、ちょっとガタついてた気がするんだけど……。」
「俺も気になってた。でも、もう時間がない。」
 基翔は、演劇の大道具を担当していた。
 本当は一晩かけてでも確認するべきだった。
 しかし、誰もが時間に追われていた。
「大丈夫……だと思う。」
 その言葉は、"そうであってほしい"という願望に近かった。
 ——そして、幕が上がる。
 達也は、いつもの明るい笑顔で舞台に立ち、演技を始めた。
 だが、次の瞬間——。
 ——ガタッ!
 異音が響いた。
「……え?」
 誰もがその音に違和感を覚えた。
 そして——舞台装置が崩れた。
「達也!!!」
 誰かが叫んだ。
 しかし、その瞬間にはもう遅かった。