君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

放課後、生徒会の仕事が少し残ってると言っていたので、図書室で本を読んで時間を潰した。

呼んだのはエッセイ。軽く読める文体の作家さんのエッセイは私のお気に入りだった。
ガラリと図書室の扉が空いて奏がやってくる。
手を上げて合図してきた。
私は本を本棚に戻して、奏の方に向かった

「お待たせ」
「ううん。全然待ってないよ。奏も生徒会お疲れ様」
「誰かさんが辞めた分、仕事が山盛りでな」
「ふふ、ごめんね」
「全くだ」

とか言いながら全然怒ってないのが分かる。
奏が本気で怒ったところって、私見たことないかも。
死ぬまでに見られたらちょっと面白いかもなぁなんて思ってしまう。

「さぁ、帰るぞ」
「うん。どこ行こっか」
「駅前のバーガー屋さんは」
「いいね。アップルパイ食べたい気分」
「俺はポテト」

いいね〜ちょっとちょうだいとか言いながら、下校の道を歩く。近すぎず、離れすぎずの距離で。
私はこの間提案された奏との同棲(でいいんだよね!?)の返事をそろそろしないとと思っていた。
いつまでも先延ばしにするのは奏に悪いから。

「なぁ。明日には梅雨明けかもだって」
「え、陽菜もさっき言ってた。ほんとなんだ!」
「そうだよ。夏になったら沢山遊ぼうな。プールも行きたいし、夏祭りもいいな」
「わーどれも楽しそう」

奏は腕でどんと私を小突いた。
そして、低くなった声で言った。

「だから、今年の夏のさゆは、全部俺が予約済み」
「それ、確定?」
「あぁ。絶対だ」
「どうしよっかなぁ〜」

その言葉が嬉しくて思わずにんまりしてしまう。
奏に必要とされて、ここに居てくれって言われてるみたいで。
嬉しい、すごく嬉しいのに、切なくて。
どうしてアキは奏が死んじゃうこんな世界をわざわざ選んで、やってきたんだろうなんて、悔しかった。