私が役立たず丸出しでつっ立っていると、騒ぎを聞きつけた日和さんとスイさんが、すぐに駆けつけてくれた。
私は混乱しながらも、今さっきおこったことを二人に説明した。
「失念していましたが、ツキ兄さんは少々惚れっぽい、という性質を持っていましたね」
「惚れっぽいといっても、フラれるまでは一途だから! ツキのこと誤解しないであげてね、刻国さん」
「ツキ兄さんは性格がネックすぎて、一度も誰とも交際できたことがありませんが、まぁフォローするとそんな感じです」
「りょ、了解です。――それで、この後どうしたら……」
「ボクがツキ兄さんを探しに行きます。日和兄さんと刻国さんは、雷火兄さんが天岩戸から出てくるよう、言って下さい」
スイさんの指揮により、私と日和さんは、物置小屋の中にいる雷火さんに話しかけたのだけど。
「オレがここにこもったのは、恋も女も関係ねぇ! オレだって守護してる火曜日の評判に不満があんだよ!好かれてないけどスゲー嫌われてるわけでもない、空気みたいな扱いにずっとムカついてたんだよ!」
雷火さんは不満を怒鳴り、物置小屋から出てきてはくれず。
仕方ないので、私たちもツキさん捜索に加わった。
「雷火が不良ぶるのは、雷火が感じている火曜日みたいに、自分を空気扱いさせないためだったりするのかな?」
「今まで考えたことありませんでしたが、そういう可能性もありますね」
「守護者って大変ですね……」
「大変というより、面倒です。――そんなことより、かくれんぼが得意なツキ兄さんの方が問題です。あまり遠くへは行っていないと思いますが……」
「困ったなぁ。どこへ行っちゃったんだろう?」
私たちはツキさんを発見できず、つまり明日も日曜日になることが決定してしまった。
「お役に立つどころか、更に事態をぐちゃぐちゃにしてしまって、すみません……」
「刻国さんが謝ることはないよ。そもそも俺がキミを巻き込んだせいなんだし」
なんて会話をしながら、私は自宅まで日和さんに送ってもらってしまった。
数時間一緒にいただけだけど、日和さんが日曜日の守護者なの、何となく分かる気がした。
日曜日って、多くの人にとってお休みだから、休憩したりリラックスしたりする日なイメージがある。
日和さんは日曜日のそういう、おだやかで包容力がある優しい曜日――というイメージにあうな、と。
*
夕飯を食べて、一応明日の学校の支度をして、お風呂に入って、二十三時五十五分。
私はベッドへ座り、左手にはアナログの腕時計、右手には時計画面を表示したスマホを持ち、午前零時になるのを待った。
本当にまた七月十三日になるのか? ループはどんな風に起こるのか? を、確認したくて。
チッチッチッ……と、アナログ時計の秒針が動くのを目で追う。
あと三秒、二秒、一秒!
三本の針が重なり、何事もなく十二を指したのは、一瞬だった。
次の日を迎えたと思った瞬間、すべての針がすごい勢いで逆回転し、それに驚く暇もなく目の前が真っ暗に――
「……ぅ、うるさいっ!」
近所の犬や猫の激しい鳴き声により、私は意識を取り戻し、ベッドから起き上がる。
すぐに失神(?)する前のことを思いだし、持ったままだった腕時計とスマホを急いで見た。
腕時計もスマホの時計も、零時一分を指している。
なぁんだ、さっき腕時計の針が逆回転してたのは夢だったんだ。
と、一瞬安心したんだけど。
スマホの時計の下に小さく表示されている文字列に気がつき、固まった。
「嘘……」
時計の下――そこに表示されている日付は、終わったはずの『七月十三日 日曜日』だった。
*
驚きと興奮により睡眠不足で迎えた、朝七時。
今日も七月十三日 日曜日なので、また水着を買いに行かなきゃだ。
正直、今すぐに「本当にループしましたね?!」と、日和さんたちに言いに行きたい。
だけどそれを言うために、エマちゃんたちとの約束を破るのはどうかと思う。
それに、ループしているなら昨日と寸分違わず同じことが起こるのか、確認してみたくなった。
私は今回の七月十三日も美桜ちゃんに、「オオカミ少女」と言われるのだろうか?
この疑問を解決すべく、私は待ち合わせの約束をした、ショッピングモールの一角にある雑貨屋さん前へ行った。
「あかりちゃんとエマちゃん、十五分も遅刻だよ!」
「美桜ちゃん、待たせちゃってごめんね。おばさんが寝坊したせいだから許して〜」
その結果、初っぱなからいきなり、私が昨日体験した七月十三日とは違っていた。
エマちゃんとあかりちゃんは従姉妹同士であり、家も近所。
だから昨日の七月十三日も、エマちゃんママが運転する車に二人は乗り、ショッピングモールへ来た。
だけど昨日、二人は遅刻しなかったんだ!
「コヨミちゃんも待たせちゃって、ごめんなさいね」
「全然大丈夫ですから、気にしないで下さい」
申し訳なさそうな顔をするエマちゃんママに、私はこう返事をし、遅刻についての話は終わりにするつもりだった。だけど。
「コヨミちゃんは大丈夫でも、アタシは大丈夫じゃありませーん! だからおわびにジュースおごって下さーい」
美桜ちゃんが上目遣いで、エマちゃんママに可愛く言い。
「もう、美桜ちゃんたらちゃっかりしてるんだから。仕方ないなぁ」
私たち四人は、エマちゃんママにジュースを買ってもらってしまった。
「大丈夫なコヨミちゃんも、ジュース買ってもらえてよかったね! コヨミちゃんは、いい子ぶるのが正しいと思ってるんだろうけど……ふふっ」
エマちゃんママが帰ってすぐ、美桜ちゃんが私にしか聞こえないように小声で言い、意地悪に笑った。
……なるほど。
この後どうなるかはまだ分からないけど、七月十三日は美桜ちゃんと会うと、嫌なことを言われるのが決定事項なのかも。
そして、幸か不幸か『ループしても前回とまったく同じ日にはならない』と、早々に分かった。それならば――
「ごめん。お母さんから『帰ってきなさい』てメッセージきたから、帰るね」
私は昨日と同じ水着を選んで買うと、嘘をついて、昼食を食べる前にショッピングモールを出た。
私は混乱しながらも、今さっきおこったことを二人に説明した。
「失念していましたが、ツキ兄さんは少々惚れっぽい、という性質を持っていましたね」
「惚れっぽいといっても、フラれるまでは一途だから! ツキのこと誤解しないであげてね、刻国さん」
「ツキ兄さんは性格がネックすぎて、一度も誰とも交際できたことがありませんが、まぁフォローするとそんな感じです」
「りょ、了解です。――それで、この後どうしたら……」
「ボクがツキ兄さんを探しに行きます。日和兄さんと刻国さんは、雷火兄さんが天岩戸から出てくるよう、言って下さい」
スイさんの指揮により、私と日和さんは、物置小屋の中にいる雷火さんに話しかけたのだけど。
「オレがここにこもったのは、恋も女も関係ねぇ! オレだって守護してる火曜日の評判に不満があんだよ!好かれてないけどスゲー嫌われてるわけでもない、空気みたいな扱いにずっとムカついてたんだよ!」
雷火さんは不満を怒鳴り、物置小屋から出てきてはくれず。
仕方ないので、私たちもツキさん捜索に加わった。
「雷火が不良ぶるのは、雷火が感じている火曜日みたいに、自分を空気扱いさせないためだったりするのかな?」
「今まで考えたことありませんでしたが、そういう可能性もありますね」
「守護者って大変ですね……」
「大変というより、面倒です。――そんなことより、かくれんぼが得意なツキ兄さんの方が問題です。あまり遠くへは行っていないと思いますが……」
「困ったなぁ。どこへ行っちゃったんだろう?」
私たちはツキさんを発見できず、つまり明日も日曜日になることが決定してしまった。
「お役に立つどころか、更に事態をぐちゃぐちゃにしてしまって、すみません……」
「刻国さんが謝ることはないよ。そもそも俺がキミを巻き込んだせいなんだし」
なんて会話をしながら、私は自宅まで日和さんに送ってもらってしまった。
数時間一緒にいただけだけど、日和さんが日曜日の守護者なの、何となく分かる気がした。
日曜日って、多くの人にとってお休みだから、休憩したりリラックスしたりする日なイメージがある。
日和さんは日曜日のそういう、おだやかで包容力がある優しい曜日――というイメージにあうな、と。
*
夕飯を食べて、一応明日の学校の支度をして、お風呂に入って、二十三時五十五分。
私はベッドへ座り、左手にはアナログの腕時計、右手には時計画面を表示したスマホを持ち、午前零時になるのを待った。
本当にまた七月十三日になるのか? ループはどんな風に起こるのか? を、確認したくて。
チッチッチッ……と、アナログ時計の秒針が動くのを目で追う。
あと三秒、二秒、一秒!
三本の針が重なり、何事もなく十二を指したのは、一瞬だった。
次の日を迎えたと思った瞬間、すべての針がすごい勢いで逆回転し、それに驚く暇もなく目の前が真っ暗に――
「……ぅ、うるさいっ!」
近所の犬や猫の激しい鳴き声により、私は意識を取り戻し、ベッドから起き上がる。
すぐに失神(?)する前のことを思いだし、持ったままだった腕時計とスマホを急いで見た。
腕時計もスマホの時計も、零時一分を指している。
なぁんだ、さっき腕時計の針が逆回転してたのは夢だったんだ。
と、一瞬安心したんだけど。
スマホの時計の下に小さく表示されている文字列に気がつき、固まった。
「嘘……」
時計の下――そこに表示されている日付は、終わったはずの『七月十三日 日曜日』だった。
*
驚きと興奮により睡眠不足で迎えた、朝七時。
今日も七月十三日 日曜日なので、また水着を買いに行かなきゃだ。
正直、今すぐに「本当にループしましたね?!」と、日和さんたちに言いに行きたい。
だけどそれを言うために、エマちゃんたちとの約束を破るのはどうかと思う。
それに、ループしているなら昨日と寸分違わず同じことが起こるのか、確認してみたくなった。
私は今回の七月十三日も美桜ちゃんに、「オオカミ少女」と言われるのだろうか?
この疑問を解決すべく、私は待ち合わせの約束をした、ショッピングモールの一角にある雑貨屋さん前へ行った。
「あかりちゃんとエマちゃん、十五分も遅刻だよ!」
「美桜ちゃん、待たせちゃってごめんね。おばさんが寝坊したせいだから許して〜」
その結果、初っぱなからいきなり、私が昨日体験した七月十三日とは違っていた。
エマちゃんとあかりちゃんは従姉妹同士であり、家も近所。
だから昨日の七月十三日も、エマちゃんママが運転する車に二人は乗り、ショッピングモールへ来た。
だけど昨日、二人は遅刻しなかったんだ!
「コヨミちゃんも待たせちゃって、ごめんなさいね」
「全然大丈夫ですから、気にしないで下さい」
申し訳なさそうな顔をするエマちゃんママに、私はこう返事をし、遅刻についての話は終わりにするつもりだった。だけど。
「コヨミちゃんは大丈夫でも、アタシは大丈夫じゃありませーん! だからおわびにジュースおごって下さーい」
美桜ちゃんが上目遣いで、エマちゃんママに可愛く言い。
「もう、美桜ちゃんたらちゃっかりしてるんだから。仕方ないなぁ」
私たち四人は、エマちゃんママにジュースを買ってもらってしまった。
「大丈夫なコヨミちゃんも、ジュース買ってもらえてよかったね! コヨミちゃんは、いい子ぶるのが正しいと思ってるんだろうけど……ふふっ」
エマちゃんママが帰ってすぐ、美桜ちゃんが私にしか聞こえないように小声で言い、意地悪に笑った。
……なるほど。
この後どうなるかはまだ分からないけど、七月十三日は美桜ちゃんと会うと、嫌なことを言われるのが決定事項なのかも。
そして、幸か不幸か『ループしても前回とまったく同じ日にはならない』と、早々に分かった。それならば――
「ごめん。お母さんから『帰ってきなさい』てメッセージきたから、帰るね」
私は昨日と同じ水着を選んで買うと、嘘をついて、昼食を食べる前にショッピングモールを出た。

