曜日男子とオオカミ少女

「事情を知らせず、強引に協力を頼んでつれてきた俺が悪いんだから、刻国さんは気にすることはないよ」

日和さんは微笑み、フォローしてくれる。
でも……気にしなくていいなんて、無理だよ。
ヒステリックに悲しみを叫んだツキさんの声が、耳から離れない。

「あの時、雰囲気を察して話をあわせられなくて、すみませんでした。そのつぐないに、私もツキさんが脱引きこもりできるように、協力させて下さい」
「つぐないだなんて、そんな! 勘違いして暴走した俺が悪いだけの話だから!」
「そうだぞ! アンタはちっとも悪くねぇから! ちゃんと確認しなかった日和が悪いんだ!」
「はい、日和兄さんが悪いです」

兄弟なんだから、もう少し日和さんの味方をしてあげてもいいのでは……?

「ごめんなさい、刻国さん。迷惑をかけているのに、協力を申しでてくれて、ありがとう」
「日和さん、お礼なんて不要です」
「説明前にも言いましたが、もうボクら兄弟だけでは、ツキ兄さんを天岩戸から引っぱり出すのは無理です。ですから、完全部外者である刻国さんが協力してくれることによって、変化が起こることを期待します」
「はい、頑張ります!」

私は膝の上で両手をにぎり、大きくうなずく。

「では、さっそくですが刻国さん。どうしたらツキ兄さんが天岩戸から出てくると思いますか?」

そんな急に聞かれても!

「そ、そうですね……私が説得してみるのはどうでしょう? 説得なんてとっくにやってるとは思いますが、同じことでもまったく無関係の人間がやれば、何か変わってこないかなぁって」

自分でもアチャーと思う、急ごしらえの安易すぎる答えだったけど、三人はあきれたりはしなかった。

「やってみてもいいんじゃねぇの? 刻国サンが言う通り、同類のオレらの説得よりは、聞く耳持つんじゃね?」
「だね。そんなつもりはないけど、俺たちは結局、ツキからしたらライバルみたいなものだろうからね。曜日守護者じゃない刻国さんなら、話を聞いてもらえるかも」
「試してみる価値はあるかと」

三人が口々に言い、うなずく。
よし! 上手くいくか分からないけど、物置小屋から出てきてもらえるよう、頑張ってツキさんを説得するぞ!

「あの、ツキさんってどんな方なんですか?」

説得するには、相手がどんな人であるかを知っておく必要があるよね。

「そうだな……繊細で自分の世界を持っていて、兄弟の中で一番イケメンだと思う」
「天岩戸にこもる前から元々引きこもり気味の、モヤシでネクラな奴」
「人間が月曜日に向けるネガティブを、そのまま自分宛だと受け取って、ちょくちょく今回みたいに面倒臭いことをしでかす人です」

く、癖が強いな? 私ごときが説得できるかな?
けどやるしかない!

「兄弟全員、担当してる曜日の影響は色々と、大なり小なり受けてはいる気がすんなぁ」
「ボクは平日の真ん中なので、バランスがとれた公平な性格をしていると思います」
「……そぉかぁ?」
「ツキは人見知りするけど、人間が好きで本当はみんなと仲良くしたいと思ってる奴だから、反応なくてもどんどん話しかけてみて欲しい」

日和さんの言葉に、それ私も同じです! と心の中で挙手をする。
ツキさんは、繊細で人見知りで面倒臭い奴だからこそ、みんなと仲良くしたいと思っているからこそ、担当している月曜日が世界中の人に嫌われている気がしているのが、とてもつらいんだろうな。

「そんじゃ、ツキんとこ行くか」
「あ、すみません。金晴(かねはる)兄さんから電話がかかってきました」
「誰か来たみたい。宅配便かな?」

スイさんのスマホが電話の着信を告げ、ほぼ同時にインターフォンが鳴って日和さんがその対応に行ってしまったので、私と雷火さんで物置小屋(天岩戸)へ向かうことになった。