(架空)執事と私

執事「傾聴って知ってる? とにかく、僕はあいづちを打って、話を聞いた。すごく、言葉に気をつかって。

僕が合わせることで、お嬢様の話は”事実”になった。本当のことか、そうじゃないかより、君の心を優先した。あのときは、それが必要だったから。

世の中には、必要な嘘も……、いや、必要な虚飾もあるんじゃないかな」

私「必要な虚飾」

執事「そう、それが必要なら、それでいいよ。

でも、はたから見ると、狂気の沙汰、おかしいと思われたかもしれないね。

僕はずっと、お嬢様って呼んでるし、

君は僕を執事として、いまでも前田さんって呼ぶし。

僕は君が回復するまでは、ずっと話を聞こうと思っていた。けど、それも良くない気がして。

みんな、一人一個ぐらい持ってるでしょ。向き合いたくないこととか、コンプレックスだったり、自分に嘘をついてごまかしたりとか」

私「私、前田さんに、いろいろしてもらてたんだね。

ずいぶん長い……、罰ゲームだね」

執事「そんなことないよ。でも、彼女は嫌がってたな」

私「彼女? 前田さん、彼女いたの?」