（架空）執事と私

私「私、前田さんに、嘘をついてたってこと？　それも、何回も」

執事「嘘というより、本当のこと、そうじゃないことを話すことで、少しでも乗り越えようとしてたんじゃないかな。

でも、ほかの人から見れば、それは、……病んでると思われたんだろうね。

何も言わずに、タクシーに乗せられて、親せきの人に精神科のある大きな病院に連れていかれたこともあったね」

私「あったかな、そんなこと」

執事「”あの人は、私が頭がおかしくなったと思ってる。でもあの人たち、何ももらえなかったからって、私に嫌がらせしてるんじゃないかな”

”ひどいよ！　ハイエナみたい”って言ってたよ。

親せきの人にも、当然、何も相続するものなんてなかった」

私「……。（おでこのあたりを右手でおさえ、右目だけ隠すようにおさえている）」

執事「ごめん。つらいと思うけど……。

本当のこととか、正直に言うとか、それって、他人を傷つけることがあるよね。

でも、”嘘をつくな”とか、”また変なこと言ってる”とは言いたくなかった。

だから僕は、言うとおりにした」