メカニカルな彼らに囲まれています

期待の眼差しで見つめてくる彼を無視して、ローテーブルの上の教科書に目を戻す。

すると、ボーイフレンドという単語に反応した寿音が若菜の手元を覗き込んだ。


「なになに、『私はスウィートハニーとデートがしたいです』。わーお、ラブラブだねぇ」

「先輩、甘党だからさ。はちみつも好きだし」

「へぇ、告白成功したんだ! 良かったね〜」

「なるほどねぇ。今も塾で会ってるの?」

「最近はあまり。もうすぐ受験だから、終わるまで会わないほうがいいかなって」


バレンタインデーに塾の先輩に告白した若菜。

結果は見事、大成功。

話によると、相手も秘かに若菜に片想いしていて、両片想いだったらしい。


例文として書いちゃうほどラブラブなのは微笑ましい。そしてめちゃくちゃ羨ましい。

けど!


「スマホも親に預けてるみたいだから、連絡も絶ってるんだ」

「ストイックだなぁ。うちのお姉ちゃんも一緒。机の上にあるとつい手が伸びるからって、こないだ鍵つきのケース買ってた」

「あー、あれ? 設定した時間まで取り出せないってやつ?」

「そうそう。勉強中はそれに入れて封印してるみたい。めちゃくちゃ集中できるって言ってたよ」

「封印……!? 閉じ込めてるの!? あんな狭いやつに!?」

「ちょっと、手が止まってますよ」