寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

顔を上げて暖の方を見ようと思った、でもそのまま抱き寄せられ糸のほつれたセーターに包まれる。

全身がポカポカあったかくて、暖の腕の中はどこよりもあったかい。

ゆっくり暖の背中に手を回した、誰かを抱きしめるなんて初めてだったからすっごいドキドキした。

これでいいのかなって、ドキドキした。


でもあったかくて気持ちいいから、暖に触れるのは。


なんだかすごく気持ちがいい。


やっぱりわたし、1人じゃなかったね。

いつだって1人じゃないよ。



だから大丈夫―…



「おい、柑乃」

「ん、なに?」

「これなんだよ」

「え、これって…」

わたしのコートのポケットからスッと暖が取り出したのは、マーリーにもらった使い捨てホッカイロ…

「浮気者」

……え?

抱きしめてた手を離してわたしを睨む。

「浮気!?ホッカイロじゃん!」

「めちゃくちゃ浮気だろ!」

「違うよ、ホッカイロだもん!」

「柑乃はそんなやつだったのかよ」

「ちょっと待って違うから!」


初めて好きになった人は、ちょっと変わった彼だけど。


「柑乃は俺といればいいんだよ!」


わたしのことをいつでもあっためてくれる、わたしのことが大好きな彼みたいです。


手をつないだらポカッてしてドキドキして、寒い冬だってへっちゃらだね。



暖がいればどこでも行ける気がするよ。


だからずっと一緒に、いてね。