寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

「あ、そうだ暖!」

暖がいればこうして外も歩ける、それは初めて経験することだから。

「ねぇ新しいセーター見に行かない!?」

糸はほつれてるし、色だってくすんでる。洗濯は何度もしてるけどそれに勝てないぐらい持ち歩いてたからたぶん直すより買った方がいいと思って。

「あ、でもその場合ってポーチを買えばいいのかな?セーターでいいの?どっちを買えば…っ」

「いらない」

「え?」

「新しいのはいらねぇ」

「えぇ!?」

あんだけ怒ってたから気に入らないのかと思って新しいの買ってあげようと思ったのに。だってもうボロボロだよ。

「あ、お金はあるよ!ちょっとなら!お小遣いためてるもん!」

もしかしてそれを心配されたかも、しがない中学生いいセーターは買えないけど今着てるのよりはいいものが買えると思うんだ。

「だからっ」

「これ柑乃の匂いするから」

……え?

「こうやって吸うと」

「やめてやめて!恥ずかしい!!」

クンクンと匂いを嗅いで、うんって頷いた。

わたしの匂いってなに!?そんなにこびりついちゃってるの!?

「そんなの絶対早く新しいのに替えた方がいいよ!」

毎日ずっと肌身離さず持ってたから…っ

「柑乃が大事にしてたやつ捨てたくない」