寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

「行きたいなぁ藤沢くんと…♡」

染まった頬を両手で押さえてうっとりとした瞳で微笑む。

「彼氏と行けたら憧れるよね〜!」

憧れる、そんな日が来たら。

「あ、今度みんなで見に行かない!?予行演習!」

「それ意味あるの?」

「つぐみんも予行演習しといた方がよくない?」

冬の空気は澄んでいてキレイなんだって、わたしにはよくわからないけど。
でも、そんなキレイな場所で見るクリスマスツリーはすっごく輝いてるんだろうなぁ…

「ねぇカンちゃん!見に行こうよ、クリスマスツリー!!」

すでに歩き出していたマーリーがくるっと振り返って目を大きくした。だからビクッて体が震えちゃった。

「マーリーっ、カンちゃんは…っ」

私が答える前につぐみんが叫んだ。その隣でただ口を開けるだけになっちゃった恥ずかしい。

「あ、ごめん!カンちゃんは行けないよね…っ」

「ううん、大丈夫」

「ツリーはやめよう!カラオケは?プリもいい!」

「いいよ、気にしないでつぐみんとマーリーで行って来てよ」

また変な空気にしちゃった。
冬の空気が澄んでるなら、私の空気はいつでもにごってる。

「ごめんね、わたし帰るね!急いで帰らなきゃだからばいばい!」


だって私にはそんな日、絶対に来ないから。