寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

佐湯くんのことは気になるけど学校にだって行かなきゃいけないし、とりあえずおとなしくしててねって言ったけど大丈夫かな?
パパもママも仕事だしたぶんいいとは思うけど…

「柑乃の好きなやつって誰?」

ぐるんっとマフラーを巻くだけにして耳当てと手袋はやめておいた。耳当てしてると聞こえずらいし、手袋はしない方がいいって言うから…


今とんでもないこと聞いて来たこの人がね。


「……はぁ!?」

こんなこと道の真ん中で言われるからおっきな声出ちゃった。

「“好きな人”と一緒にクリスマスツリーを見るのが夢なんだろ?」

「……。」

そんなの今聞く?
こっちは他に考えることあるんだけど!

「じゃあ誰か聞いとく必要があるだろ」

「聞いてどうするの!?てゆーか行けないもん!アレルギー出ちゃうから…っ」

クリスマスは今よりもっと寒くなる、そんな日に外に出られるわけないでしょ!

「俺が連れ出してやるよ、こうして」

くいっとつないだ手を引っ張ってわたしに見せる、ぎゅっと握られた手からはポカポカとあったかい温度が巡って来る。

「…待って!一緒に行く気!?」

「俺がいるから行けるんだろ」

「そうだけどっ」