寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

ぎゅっと暖の力が強くなって、わたしの体を包み込んだ。

抱きしめられた胸の中はポカポカして、冷たかった体が熱を取り戻していく。
もう少しでじんましんが出そうだったリンゴみたいに赤くなってた頬も少しづつ肌色に戻っていた。


あったかいなぁ、暖は。

あったかくて気持ちいい、それでいて優しくて…


「俺がその夢叶えてやるから」

私の心は熱を持ったみたいにきゅぅっとなって。

「そんなの…、無理だよ」

「無理じゃない」

「だって…っ」

そんなのわたしが1番わかってるのに、そんなことできないってわかってるのに…



“夢のため”


わたしの全部を抱きしめてくれるんだね。

そんなこと言われたのは初めてだよ。


“もっと自由に生きてみたかった、から?”


夢だった、って過去形にしようと思ってたのに。


「柑乃、だから…」

ぎゅっと暖のセーターを掴んだ。

こんなボロボロのポーチに入れてるんじゃなかった、もうちょっといいやつにしてあげればよかった。

でも気に入ってたんだもん。
触り心地がよくて触ると落ち着くんだもん。

暖の腕の中は落ち着く…

「柑…乃っ、…」

「なに?暖…」

ずしんっと重くなった、暖の体重がのしかかって動けなくなるぐらい重い…っ

「暖!?」