寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

ぶわっと瞳が熱くなって前が見えなくなった。
いっぱいの涙が視界を邪魔する。

「本当はね、駅前のクリスマスツリーを見たいってずっと思ってたの!」

この辺だと1番大きいクリスマスツリー、ここに住んでいたら知らない人はいないと思う。

「毎年毎年冬になると教えてくれるの、今年はこんな飾りがあってとか何色でデコレーションしたとか夜になるとこんな風に光るって…っ」

そこへ行けないわたしはいつもかじりつくようにテレビを見てた。ニュースから流れるクリスマスツリーをずっと。

「憧れてたんだ」

だけどそれは永遠に叶わない。

「好きな人とクリスマスツリーを見に行きたかったのっ」


夢だったの。


わたしも、そんな人がもしこの先現れたら…

澄んだ空気の中、ピカピカ光るクリスマスツリーを一緒に見たかった。


そんな夢を見てたの。


ポロポロ涙が流れてマフラーはびちゃびちゃだった。

でもこれで本当に諦めるから、わたしには無理なんだってわかったから…

涙と一緒に流してしまうから。

「柑乃っ」