寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

一気に飲んでしまったらもったいなくて、ひとくちひとくち味わう。

「ここイートインしかないんだって、買った後すぐに家に帰ればいいんだけど…」

周りを見ればたくさんの子たちがお店の前のちっちゃなテーブルで写真を撮ったり動画を撮ったり楽しんでる。
水色の壁にチョコレートがたれたデザインをしたお店は映えて、立ったまま使うテーブルだって気にならない。むしろそれも演出みたいな。

いつもお母さんの運転する車から見てた、この道を通り過ぎるたびに。

「これ冬限定の商品なんだよ」

ホットチョコレートミルクの看板を横目に。

「暖もいる?」

「いらねぇよ」

「おいしいよ」

「カイロの俺が飲んだらおかしいだろ」

「…。」

そのセリフがまずおかしい…!

ふぅっと白い息を吐いて最後の一口を飲み干した。口の中が甘ったるくてしあわせだ、すっごくおいしかった。

「楽しかった!」

「飲みもん飲んで楽しいなんて感想あるかよ」

「そんなことないよ、すごい楽しかったよ」

飲むだけじゃないよ、この場所が空間が…
全部、楽しかったから。

「ありがとう、暖!」