寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

「じゃ、行くか!」

絡まった手は簡単にはほどけない、それがあったかくてポカポカして…

でもドキドキして。


だってこれじゃ…っ 



恋人みたいだ…!!



「ねぇ待って!」

引っ張られるように階段を下りていく。

「ちょっと待ってよ!」

何度呼びかけても止まってくれなくて、転ばないようについていくしかない。

「…待って暖っ!!」

だから初めて名前を呼んだ。
充電式カイロの名前なんて呼んだことないよ、何もかも初めてだよ。

「なんだよ?」

でもちゃんと呼んだら止まってくれるんだね。

くるっと顔だけ振り向いていちいち距離が近くて困っちゃう。

「ど…、どこ行くの?連れてってくれるって…」

「どこでもいい」

「え?」

「柑乃が行きたいところならどこでも、俺が連れてってやる」

わたしが行きたいところならどこでも…?

「どこに行きたい?」

わたしの行きたいところ…

それは…

「じゃあ…!」