寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

さびしげにセーターをつかんでいたわたしの手をきゅっと包み込んで握った。


え、今なんて…?


「俺がいたらどこでも行ける」


大きな手はぎゅっと覆うように握って見上げたわたしと目を合わせた。


「俺が柑乃を連れ出してやるよ」


そんなこと言われてもわからなくて、考えたことなくて、寒い冬の日は学校へ行くだけで毎日必死で…

そんなのわたしには…っ

「行くぞっ」

「わっ、ちょっと待ってよ!」

グイッと握った手を引っ張られて強引に部屋の外へ出た。

「て、手袋!マフラーいるし、あとカイロ…っ!」

引っ張られた手を反対に引っ張り返して部屋の中に戻ろうとする、コートは着たまんまだったけどマフラーも手袋も何もつけてないもんこれじゃ外に出られるわけない。

玄関のドアを開けるだけでも精一杯、それにいつも持ち歩いてる充電式カイロも…!

「だからっ、それが俺だって言ってんだろ!」

さらにグンッと引っ張られたから、もう少しで胸の中に飛び込むとこだった。ギリギリのところで足を踏ん張って、至近距離で目を合わせて大きく見開いた。

「そんな変質者みたいな格好しなくていい」

「変質者!?」