寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

つないだ手から温度が消える。

「柑乃とクリスマスツリーを見られてよかった」

「暖…っ」

もっと感じたくてもっとほしくて抱きしめた、忘れたくない暖の温度を。

「…っ」

言いたいことはたくさんあったのに、何も出て来なくてただ抱きしめるしかできなくて…

行かないでなんて暖を困らせるだけの言葉も、さようならって別れを指すような言葉も、何も言えない。

「柑乃…っ」

抱きしめられた暖の腕の中はもうあたたかくなくて。

「暖!わたしがっ、あっためてあげるから!いつも暖がしてくれたみたいにわたしが…っ」

溢れて来る涙が邪魔だ。


泣きたくないのに、泣いたら終わっちゃうみたいだ…!


「暖っ」



―…っ。



目の前が暖しか見えなくなった瞬間、そぉっとくちびるが触れた。


暖の温度をくちびるに感じた。



不思議、その一瞬だけはあったかかったの。


人間の男の子みたいに。



「柑乃の夢叶えられたか?」

「うん…っ、叶った!いっぱい叶った!」

「じゃ、よかった」

最後まで笑って、もう温度の感じない手をつないで。

「暖がっ、全部叶えてくれたから!」

泣きじゃくるわたしを抱きしめるー…