寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

暖…っ 


グッとつないだ手に力が入る、ポカッと上がる温度に泣きそうになる。

歩き出した暖に引っ張られて、俯きそうになる顔を無理に上げて…


俯いたらもったいないから、前を見なきゃ。 

暖のことを、見なきゃ。


少しづつ暗くなり始めた駅前はちょこちょこと電気が点き始めた。

人も増えて来てぞろぞろと集って来る。



大きなクリスマスツリーの前に。


これがずっと憧れてたクリスマスツリー…



お、大きい!


「すごいねっ、初めてだ!」

あ… 

目の前のツリーに興奮して目を大きくして暖の方を見ちゃった。笑われた。

「それはよかったな」

「……。」

恥ずかしい…

「これいつ点くんだ?」

「たぶんもうすぐ、6時になるからー…」

カチッと時計台の時計が針を指した。
その瞬間、真っ暗だった大きなクリスマスツリーの明りがピカーッと一気に光り出した。

わっ…

すごい、こんなに…


「キレイ…」


やば、すご…

え、他に言葉が出て来ない…


すごい…!


「ねぇ暖すご…っ」

暖はツリーの方なんか見てなくて、ずっとわたしの方を見てた。

じっとわたしのことを、見てかすかに笑ってた。

……。


「柑乃、ありがとう」