寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

「佐湯くんは本当に行かないの?」

すぐに着替えて支度をした、コートも羽織って準備はばっちり。

「ぼくは行かな~い、お腹すいちゃうし」

「でも…」

「行かねぇって言ってんだからいいだろ」

…1人で留守番させちゃうのも、いいのかな?

お腹すいちゃう佐湯くんの気持ちもわかるし無理に誘うのもよくないかなぁ。

「ぼくのことはいいから行ってきてよ柑乃ちゃん」

「うん…わかった、じゃあ行ってくるねあんまり遅くならないようにするからね!」

ママは今日も仕事、だから友達と遊んで来るってLINE入れとけばいいよね。

「いってらっしゃい~」

「わっ」

ピタッとくっ付いた佐湯くんにぎゅっと抱きしめれた。

「お前…!」

「いってらっしゃいのハグだもーん」

暖に見せつけるようにぎゅーってしてるのは…まぁいっか!

「ちょっとくらいいじゃん」

佐湯くんのことも好きだから、暖とはちょっと違うかもしれないけど好きだよ。

わたしも佐湯くんのこと、好きだよ。

「じゃあお留守番よろしくね」

「はぁーいっ」

「いってきます」

ドアを開けて部屋から出る、佐湯くんは閉まる最後の最後まで手を振っていた。

だから同じよう手を振り返したけど、最後の言葉は聞こえなかった。


「ばいばい、柑乃ちゃん」


ドアが閉まってしまったから。