寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

制服の袖で涙を拭いて、涙で詰まって出せない声を振り絞る。

「暖が…っ」

壊れてしまった、なんて言えなかった。

そんなこと口に出したくなかった。

制服のスカートのポケットを上からぎゅっと握る。

だって暖に聞こえちゃうかもしれないもんね、聞こえてるかもしれないもん。

「柑乃さん…」

俯いて声をつまらせて泣くわたしの前に緋太さんが立った。
手をわたしの前に出そうか迷ってやめたのがわかった、グッとグーにして握りしめたから。

「僕では彼の代わりにはなれませんか?」

顔を上げることができなかった、だから緋太さんがどんな表情をしていたのかはわからない。

わからなかったけど…


保健室へ来るのは少し怖かったの。


緋太さんはやさしいから、わたしを甘えさせてくれるよね。

冷たくなった手を丁寧にあっためてくれる。


だけど今はそれが苦しい。

暖からもらう温度を忘れたくないの。


わたしは暖のことが好きだからー…


「代わり、って言ってる時点で無理ですよね」