寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

「買ってあげるわよ」

次の日の朝、ママに話したらそう返って来た。

「そんなに高いものじゃないし、新しいの買いなさい」

トーストをかじるわたしの前でせわしなく流し台で洗い物をして、普通だったらここはありがとうってよろこぶところなんだけど。

「そんな落ち込まなくてもいいじゃない、そんなにあの充電式カイロが気に入ってたの?」

トーストの味がしない、イチゴジャムがたっぷり塗ってあるのにちっともおいしくない。

「…うん」

気に入ってた。

すごくすごく大切だった。

わたしの宝物だった。

「また気に入ったの買えばいいわよ」

新しいのなんかほしくない。




わたしがほしいのはー… 



暖は消えちゃった。


もうあの暖じゃなかった。


充電式カイロの姿に、戻ってしまった。