寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

ずっと不思議には思ってた。

どうしてこうなったのか、でもあやふやでわからないまま過ごしてた。  


“俺がその夢叶えてやるから” 

あの時の暖の言葉、じゃあ佐湯くんもー…


「暖は自分が壊れかけてることわかってたから…、だから最期に柑乃ちゃんの夢を叶えてあげたくて」

涙が、また溢れて来る。
止まらなくてどうしたらいいかわからなくて、もう拭うことも忘れちゃって。

「ぼくもっ、なにかしたいって思った…っ」

「佐湯くん…っ」

「ぼくじゃなにもできなかったからっ、ぼく1人じゃこんなこと…っ、暖がいたから…!」

もう触れてもあったかくない暖を、ポカッとわたしをあっためてくれない暖を、もうわたしの名前を呼んでくない暖をー…

「だって暖はいつも、柑乃ちゃんのそばにいたから」

今でもわたしは感じてるのに。

暖がいないと何もできない。

寒い日は出かけられないから学校へも行けない、チョコレートミルクだって飲めないし星も見られない…


ねぇ暖、わたしどこへも行けないよ。


暖、どこにもいかないでわたしといてよ。



もう一度、わたしと手をつないで…



「間に合わなくて、ごめんね」

しーんとした部屋に佐湯くんの声だけが残った。