寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

暖が壊れた。

壊れるって変な言い方、暖は人間の姿をしてるのに。 



「…佐湯くんて力持ちだったんだ」

「お湯いっぱい飲んだからね~!」

佐湯くんが暖を運んで家まで帰って来た。
階段を上ってわたしの部屋まで、前もこんなことあったよねって思いながら。

でもあの時は、ただ寝ていただけだったね。

「ふぅ~、疲れた!とりまふとんに寝かせておけばいっか~」

「……。」

「お腹すいた~!」

「…。」

佐湯くんがケトルに入ったお湯を湯呑にそそいで、ちょこんっと正座してごくんっとお湯を飲んだ。ぷはぁーって声を出しながら冷えた体をあっためた。

「…ねぇ佐湯くん」

「ん~?」

「佐湯くんはいつから知ってたの?」

「え?」

ベッドの前に腰を下ろした、寝息も聞こえない顔を見て。

「暖が、…こうなること」

「……。」

ごくんっとお湯が喉を通っていく音が聞こえた、ふぅーっと静かに息を吐いて。

「もうずっと、あんまりよくなかったらしいよ」

え…、もうずっとって…

「ほら、ぼくたち寒くならないと柑乃ちゃんには会えないからその間はおやすみしてるんだけどおやすみが終わった時からなんかおかしかったって」