寒がりなわたしの彼はすぐにわたしを抱きしめたがるから

何がどうしてこうなったのか…

「俺のこと忘れていきやがって!」

「ご、ごめんなさい…っ」

なぜわたしは充電式カイロにあやまってるの?

あぐらをかく充電式カイロの前で正座して…

「俺がいなかったら困るだろ!」

すごい誤解されそうな言い方!

しかもちょっと顔がいいのが、なんかっ 

なんか…!

「でも…っ!本当に充電式カイロかどうかまだわからないし、わたしを騙して…っ」

「正真正銘、柑乃の充電式カイロだ。ほらっ」

チラッとセーターをめくる、現れた素肌にクッキリと浮かび上がる文字が…
 

“カンノ”

紛れもなくわたしの字…!!!


わたしのだよって充電式カイロに油性ペンで名前書いたよね、そーいえば!!!

お腹にこの文字は…他じゃ書けない、と思う。
男の子のお腹に名前書いた覚えなんかないし、あるのは買ってもらったばっかの時に自分のものだってわかるように書いたことぐらい。


じゃあ本当に?

今目の前にいるのはわたしの充電式カイロー…


「ボサボサの頭してひでぇ顔だな」

でも口は悪い。むかつく。

少しでも早く帰りたい気持ちとちょっとでも体をあっためようと思って必死に走って来たの!それでこうなっちゃったの!

冷たい風に触れたから顔が赤くなっちゃって…っ 

むぅっと口を尖らせたら、眉と眉の間にしわを寄せて睨み返された。

なんでそっちが怒ってるの!?わけわかんない!

「こ、これは何なの?どうゆうこと!?なんで…っ」

ビシッと指を差す、反対の手は腰に添えて膝を立てる。

「カイロが人間の姿してるの!?」

ちょっと睨まれたくらいで負けないんだから!

「なんでって…」

あぐらをかいた膝の上に肘を置いて頬杖をついて気だるそうな顔で私を見てる。
スッと手が伸びて来て指差した手を掴まれた。


「夢のため」