鉄の道を越えてー奏と文香ー

第40章: 未来への一歩
季節は少しずつ冬へと向かっていた。学校の外では、冷たい風が吹き抜け、空気が乾燥している。そんな中で、放課後の学校に残るのは少数派だ。校庭の片隅に、奏と文香は並んで座っていた。静かな午後、二人の周りには他の生徒たちの声が時折聞こえてくるだけで、いつもの賑やかさは遠く感じられた。
文香は何も言わずに、空を見上げていた。その目に映るのは、広がる灰色の空と、もうすぐやってくる冬の兆しだ。手のひらに冷たい風を感じながら、文香は一つ大きなため息をついた。
「どうした?」奏が静かに聞いた。
文香は少しだけ顔を横に向け、そのまま答えた。「こんな風に座ってると、時間が止まったみたいに感じるね。何も考えずに、ただここにいるだけで、落ち着く」
奏は文香を見て、穏やかに微笑んだ。「それだけじゃダメだよ。もっと自分を大事にして、歩んでいけるようにしないと」
文香は少しだけ笑った。その笑顔には、以前のような迷いや不安が見え隠れしていなかった。代わりに、今の自分が進んできた道をしっかりと見つめている強さがあった。
「うん、でも、ちょっとだけ、立ち止まってもいいかなって思ってる。すぐに走り出せるようにね」と、文香は言い、奏に視線を向けた。
奏は何も言わずに頷き、しばらく静かに歩調を合わせていた。文香が何かを決めたように感じるその瞬間、奏もまたその気持ちに応えるように沈黙の中で寄り添った。
その後、ふとした瞬間に正郎が近づいてきた。「おいおい、二人ともまだこんなところで、何をしてるんだ?」と、少し冗談めかして声をかけた。
将隆もその後ろからやってきて、ふざけた顔で言った。「お前ら、なんだかすっかり落ち着いちゃって、気持ちいいんだろうな。あんなにギクシャクしてたのに、もう仲良しすぎるだろ?」
文香は少しだけ照れたように笑い、奏も顔を少し赤らめながら答えた。「いや、別にそんなことは…」
「お前ら、ほんとに変わったな」と正郎が言い、将隆も笑いながら続けた。「でも、変わったのはいいことだ。お前らが幸せそうで、こっちも嬉しいよ」
その言葉に、文香は少しだけ顔を赤らめながらも、心の中で温かさを感じた。今の自分が、周囲の人々に支えられていることに気づくたび、彼女は力をもらっている。
「ありがとう、みんな」と文香は静かに言った。その言葉には、感謝の気持ちが込められていた。
「じゃあ、今日はみんなでどこか行こうか?」正郎が提案し、将隆も「いいね!」と応じた。
文香は少し考え、奏を見た。「行こうかな?」
奏は少しだけ笑みを浮かべて頷いた。「うん、行こう」
その後、四人は学校の近くのカフェに寄り道することに決めた。いつも賑やかな正郎と将隆、そして、静かに微笑む奏と文香。文香はその光景に、自分がどれだけ周囲の人々に支えられてきたのかを実感していた。そして、その支えを受け入れることができる自分が、少しずつ成長してきたことを感じていた。
カフェの中、温かい飲み物を手に、みんなは軽く会話を楽しみながら過ごした。文香の目の前には、今の自分に必要なものがすべて揃っていると感じた。過去の自分を乗り越え、これからどんな未来が待っていても、必ず歩んでいけると信じていた。
「この先、何があっても大丈夫だよね?」文香はふとつぶやいた。
奏は微笑んで言った。「ああ、どんな困難が待っていようとも、一緒に乗り越えていこう。お前がいるから、俺は強くなれる」
その言葉に文香は心の中で確信を持ちながら、少しだけ顔を赤らめた。そして、もう一度、前を見据えた。これから先、どんな未来が待っているのかを恐れずに進んでいくことを、心から決意していた。