鉄の道を越えてー奏と文香ー

第36章: 新しい風
朝、学校の校門をくぐった瞬間、文香は深呼吸をした。秋の冷たい空気が心地よく、どこかすっきりとした気持ちを与えてくれる。それまで感じていた重さが、少しずつ軽くなっているのを実感していた。過去に縛られていた自分を乗り越えたからこそ、今の自分がある。前を見つめるその目には、確かな決意が宿っている。
「おはよう、文香!」正郎が元気よく声をかけてきた。その明るさに、文香は微笑み返す。
「おはよう、正郎」と文香は軽く答える。これまで彼女は、周りと関わることに抵抗を感じていたが、今は違った。少しずつでも、自分を開放し、周りと心を通わせていくことに慣れつつある。
将隆も隣に立ち、「今日も頑張ろうな」と言いながら、文香に微笑みかける。その表情には、心からの励ましが込められている。
「うん、頑張る」と、文香は言葉を返した。これからの自分がどうなっていくのか、まだ不安もあるけれど、それを乗り越える力が自分の中にあると感じていた。
その後、学校内の廊下を歩いていると、文香の前に奏が現れた。彼の顔にはいつもの優しさが浮かんでいる。文香は思わず彼に視線を向け、そのまま歩み寄る。
「おはよう」と、奏が静かに言った。
「おはよう、奏」と文香は答え、少しだけ微笑んだ。その笑顔には、過去の自分を少しずつ解放してきたという証があった。
「今日も一緒に歩くか?」奏は穏やかに言った。その言葉に、文香は一瞬だけ驚いたが、すぐにうなずいた。
「うん、今日は少しだけ歩こう」
二人は並んで歩き始め、少しの間、何も言わずに歩き続けた。周囲の雑音が遠く感じられ、二人だけの空間が広がる。その静けさの中で、文香は少しだけ奏を見上げた。彼と過ごす時間が心地よく、もう少しだけこうしていたいと思う自分がいた。
その時、ふと奏が口を開いた。「文香、今日、もし話したいことがあったら、言ってもいいんだぞ。何かあれば、いつでも」
その言葉に、文香は少しだけ動揺した。しかし、すぐに落ち着いて、静かな声で答えた。「ありがとう、奏。でも今は、ただ歩いているだけで十分なんだ」
奏はその答えをしっかりと受け入れ、さらにゆっくりと歩みを進めた。「そうか、無理しなくていい。君が楽に感じるペースで、一緒にいればいいんだ」
文香はその言葉を心から受け入れ、ふっと微笑んだ。その時、彼女は確信した。自分が過去を乗り越えた先に、今度は新しい道が広がっている。そしてその道を、奏と一緒に歩んでいけることが、どれほど幸せなことかを。
その日、放課後。文香は奏とともに学校を後にし、少しだけ遠回りをして帰ることに決めた。二人で歩く道は、これからの未来を感じさせるものであり、過去に縛られていた自分を少しずつ解き放つ瞬間だった。
「あの時の伝説を背負ってきた私が、今こうして歩いていけるなんて」と文香が静かに言った。
「君が選んだ道だ。どんな道でも、一緒に歩く」と奏は答えた。その言葉に、文香は深く息をつきながらも、心の中で少しだけ安心した。
今の自分を信じ、これから進むべき道を選んだ文香には、もう何も恐れるものはない。そして、奏との関係はますます深まり、二人の絆がどんどん強くなっていくのを感じていた。