鉄の道を越えてー奏と文香ー

第32章: 新しい始まり
夕暮れが広がる学校の校庭で、奏と文香は並んで歩きながら、静かな時間を過ごしていた。文香の肩がわずかに揺れ、その背中に少しずつ力が戻ってきているのを感じる。奏は彼女の歩調に合わせるように、ゆっくりと足を進めていた。今日は、文香にとっての大きな一歩を踏み出す日だと感じていた。
二人の後ろで、正郎が大声で笑いながら何か話しているが、文香はそれに反応することなく、ただ前を見つめている。その目に映るのは、かつて恐れていたもの、過去に縛られた自分だった。しかし、今はその自分と向き合い、少しずつでも進んでいこうと決心したのだ。
「奏、ありがとう」と、文香が静かに言った。その声には、いつもと違う柔らかさがあった。奏は驚いて顔を向けたが、文香はしっかりと前を見つめながら続けた。「私、今までずっと一人で抱えてきた。けど、あなたに話して少し楽になった気がする」
その言葉に、奏の胸が温かくなるのを感じた。文香が心を開いてくれた瞬間、彼女がこれまでどれだけ孤独だったのかを少しだけ理解できた気がした。そして、奏は彼女の隣で歩くことができる幸せを感じていた。
「その一歩を踏み出したことが、すごいことだよ」と、奏は優しく言った。「君が今までどれだけ強くあろうとしてきたのか、それがよく分かる。でも、もう一人で背負う必要はない。僕が君を支えるから」
文香は少しだけ立ち止まり、静かに奏を見つめた。その目に、何かを決意したような強さが宿っていた。
「私、これからどうなるか分からない。でも、少しずつでも前に進みたい」と文香が言った。その言葉に、奏はうなずいた。
「一緒に進もう。過去に縛られた自分を解き放つために、僕も君を支える」と、奏は強く言った。その言葉には、どんな試練が待っていても一緒に乗り越えるという覚悟が込められていた。
その時、ふいに正郎が二人の前にやってきた。彼は少し息を切らせて、「おい、お前ら、何かいい雰囲気だな」とにやりと笑いながら言った。
将隆が後ろから続き、「お前ら、やっと進展したな」と言って肩を叩いた。二人はお互いに顔を見合わせて、笑いながら歩き出す。
「でもさ、文香」と正郎が続けた。「お前が過去を乗り越えて、もっと自分らしく生きるって、すげぇよ。今まで我慢してきた分、これからは楽しめよな」
文香はその言葉に少しだけ微笑んだ。「ありがとう、正郎。みんながいてくれるから、私は少しずつでも変わっていける気がする」
その言葉に、奏は心から微笑んだ。文香が少しずつ過去を受け入れ、変わろうとしているその姿を見て、彼女の強さを実感していた。
「これからだな」と、将隆がにやりと笑って言った。「お前らの未来、楽しみにしてるぜ」
二人はその言葉を受けて、少し歩きながら黙っていたが、心の中で決意が固まった。文香が過去と向き合い、前に進んでいくその姿を、奏はこれからも見守り続けるつもりだった。どんな困難が待っていようとも、二人で乗り越えていく。