鉄の道を越えてー奏と文香ー

第24章: 交わる運命
放課後、校舎の裏手に差し込む夕日が、校庭を橙色に染めていた。風が強く、秋の香りを運んでくる中で、奏は少し考え込んでいた。文香と歩いた道、それがどう進んでいくのか、自分の思いは確かなのに、それが彼女に届いているのか、どうしても不安がよぎる。
その時、後ろから誰かの声が聞こえた。
「おい、奏!」
振り返ると、仲の良い友人たちが歩いてくるのが見えた。正郎、将隆、そして紗也可、純音の顔が見えた。正郎が一番先頭に立って、にやっと笑いながら近づいてくる。
「どうした、顔が疲れてるぞ?」正郎が奏に向かって声をかける。
「別に大丈夫だ」と奏は軽く答えたが、内心ではちょっとした戸惑いがあった。最近、文香とのことで考えることが増えていて、彼らにどう話すべきか迷っていたのだ。
「おい、奏!」今度は将隆が声を上げた。「さっき文香と一緒に歩いてるとこ見かけたけど、何か進展あったか?」
奏は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷静になりながら答える。「まぁ、少しずつだけどな」
「ふぅん、あの文香と…か」と、将隆は驚きの色を隠さずに言った。「お前、すげーな。俺なんて、あんな冷たい感じのヤツとどう話したらいいかわかんねぇよ」
奏は苦笑いを浮かべながら、彼の言葉を流した。「いや、別に大したことじゃない」
そのとき、紗也可が静かに口を開いた。「でも、文香はあなたが言うほど簡単じゃないって思う。彼女が心を開くのは、かなり難しいよ」
「そうだよな」と、純音が少し考え込みながら言った。「あの子がどれだけ強がってるか、誰もわかんないと思う。でも、それを支えるのは、君だけだろう」
奏は少しだけ立ち止まり、視線を下に向けた。彼の心の中では、文香の強さが時に彼を苦しめていることを感じていた。彼女の背中には、誰にも言えない秘密があることを、彼は知っていた。だからこそ、彼女を支える覚悟を決めていた。
「でも、俺は彼女に関わりたいと思う」と奏は静かに言った。その言葉には、これまでの迷いがすべて詰まっていた。
「うん、分かるよ」と正郎が頷きながら言った。「でも、奏、お前だけが彼女を支えるわけじゃないぞ。俺たちだって、みんなで支えてやるからな」
将隆が軽く肩を叩いてくる。「そうだぜ。お前が心配してるみたいに、文香だって一人じゃないってこと、分かってやれよ」
紗也可は静かに視線を向け、続けた。「でも、やりすぎないで。文香は強いから、頼りすぎないように」
奏は深く息をついて、少し微笑んだ。「ありがとう、みんな」
その瞬間、ふと彼の目に、文香が遠くから歩いてくるのが見えた。彼女の目には、どこか疲れが見え、少し歩き方がふらついているようにも見える。奏はその姿を見つめながら、無意識に彼女の方に足を進めた。
その時、正郎がニヤニヤしながら言った。「おい、あの子、なんか元気ない感じだな」
「大丈夫か?」将隆も少し心配そうに言った。
「俺が行ってくるよ」と、奏は一歩踏み出しながら言った。「少しだけ話しかけてくる」
文香が奏に気づいて、彼女はすぐに足を止めた。その目が少しだけ驚いた様子で、奏を見つめる。
「どうした?」と、奏が声をかけると、文香は少し考えるようにしてから答える。
「何でもない」とだけ言った。
その言葉に、奏は少しだけ困惑したが、無理に追求することはせず、彼女の隣に並んだ。「疲れてるのか?」と、彼は静かに尋ねる。
文香は少しだけ息をついて、目を伏せた。「少しだけね。でも、大丈夫」
「無理してないか?」奏が心配そうに尋ねると、文香はしばらく黙った後、静かに言った。「私は強いから、大丈夫」
その言葉に、奏は黙って彼女を見守った。彼女がどれだけ強がっているのか、それを知る度に心が痛む。しかし、それでも彼女を支えるために、彼は今はただ黙って彼女のそばにいるしかないと感じた。
そのとき、正郎と将隆、紗也可、そして純音が少し離れた場所で、文香の様子を見守っている。彼らもそれぞれに心配しているが、奏が文香に寄り添うためには、周囲の支えも大切だと思っているのだろう。
「ありがとう」と文香は静かに言った。「でも、今日はもう少し一人でいたい」
奏はその言葉を素直に受け入れ、少しだけ離れた場所で彼女を見守りながら、静かに立ち尽くしていた。文香が背負っているものを、彼一人で全て背負うことはできない。しかし、少しずつでも彼女の心が開けるように、彼は今できることをするだけだと決めた。