小舟が豆粒ほどの大きさになると、それまで凪いでいた海が次第に荒れ始める。真っ暗な夜の入り江に、冷たい海風が吹き込んでくる。
両腕で肩を抱くと、陽葉は寒さに身体を震わせた。風を避けるところをと思うが、それができそうな場所は背後の不気味な洞窟しかない。
龍神島はおそらく、荒海に囲まれた無人島。五頭龍の話はただの伝説。これまで島に送られた花嫁たちは、寒さに凍えたか、飢えで命を落としたのだろう。
ひとりきりで孤独に死んでいくのなら、いっそのこと伝説の五頭龍に喰われてしまうほうがよかったのかもしれない。
これからどうしたらよいのだろう。
考えているあいだも、冷たい風が身体を冷やしていく。そのうち寒さに耐えきれなくなり、陽葉は洞窟へと足を踏み入れた。
引き振袖の裾を持ち上げて少し奥へと進んでいくと、三つに道が分かれていた。
三方向どちらへ進むべきか迷っていると、ほんの一瞬だが、右端の道の奥にぽわっと橙色の灯りが見えたような気がした。その幻灯に導かれるように、陽葉は右の道へと進む。
洞窟の壁は、元来の岩の性質なのか白っぽく仄かに光っていて慣れたら目が効いてくる。
ごつごつした歩きにくい岩場になっているのかと思えば、意外にも洞窟の中は、なめらかな岩肌の歩きやすい道になっていた。まるで、人が生活しやすいように作られたようだ。
両腕で肩を抱くと、陽葉は寒さに身体を震わせた。風を避けるところをと思うが、それができそうな場所は背後の不気味な洞窟しかない。
龍神島はおそらく、荒海に囲まれた無人島。五頭龍の話はただの伝説。これまで島に送られた花嫁たちは、寒さに凍えたか、飢えで命を落としたのだろう。
ひとりきりで孤独に死んでいくのなら、いっそのこと伝説の五頭龍に喰われてしまうほうがよかったのかもしれない。
これからどうしたらよいのだろう。
考えているあいだも、冷たい風が身体を冷やしていく。そのうち寒さに耐えきれなくなり、陽葉は洞窟へと足を踏み入れた。
引き振袖の裾を持ち上げて少し奥へと進んでいくと、三つに道が分かれていた。
三方向どちらへ進むべきか迷っていると、ほんの一瞬だが、右端の道の奥にぽわっと橙色の灯りが見えたような気がした。その幻灯に導かれるように、陽葉は右の道へと進む。
洞窟の壁は、元来の岩の性質なのか白っぽく仄かに光っていて慣れたら目が効いてくる。
ごつごつした歩きにくい岩場になっているのかと思えば、意外にも洞窟の中は、なめらかな岩肌の歩きやすい道になっていた。まるで、人が生活しやすいように作られたようだ。



