目を伏せて静かに言う葛谷さんのとなりで、未來先輩は二の腕を抱いて悲しそうな顔をしている。
みんな…過去に、なにか辛いことがあったのかな?
なにを考えて、どういう気持ちで今、謝りに来てくれたのかは分からないけど…。
みんな、本当の悪い人ではなかったんだ。
「…まずは、お兄ちゃんの動画を消してもらえますか?」
あのあと、お兄ちゃんが誰に見られてもかまわない、って言ってたから、消してもらうために会いに行くことはしなかったんだけど。
誰かに悪用されるのは嫌だから、やっぱり消しておいてもらわないと。
「あれなら、もう消した。茅都があれを見られたくないのは妹だけで、他の誰に見せても意味はないからな」
「…ひどいです」
「すまない」
だましてたなんて、って思ったのに、素直に謝られたら怒りたい気持ちがどっかにいっちゃった。
わたしは息を吐きながら笑って、先輩たちの前に手を差し出した。
「いいですよ。仲直り、しましょう」



