【中】酸いも甘いも、イケメンぞろい。

「う、そ…」


「お前の好みが違えば、こっちの男がお前を口説(くど)きに来てた。俺はお前のことを、ただのターゲットとしか思っていない」


「…」




 葛谷さんの冷たい言葉を聞いて、傷ついた顔をした弓崎さんは、グッと唇をかんでうつむいた。

 手を上げながら顔を上げた弓崎さんが、葛谷さんをにらみ、整った顔にビンタをしたのは一瞬のことで。

 パンッという音がひびき渡って、廊下にいた人も、教室の中にいる人もみんなこっちを見る。




「く、葛谷さんっ」




 思わず声をかけると、弓崎さんは、犬丸先輩にも、未來先輩にもビンタをした。

 痛そうな音がしたし、みんな、ほおが少し赤くなっているから、ああ、と中途半端(ちゅうとはんぱ)に手を上げて半歩近づいてしまう。

 でも、3人とも気にしていない様子でまっすぐ弓崎さんを見て、葛谷さんにいたっては落ちついた声を発した。