【中】酸いも甘いも、イケメンぞろい。



 罪悪感なんて、(いだ)いたことはなかったのに。




「…子どものときぶり、だな」




 心がゆさぶられる出来事は。


 小学校に入ってから始めた剣道は、俺にとって初めて出会った熱中できるものだった。

 毎日竹刀(しない)に触れていたし、練習を休んだことは1日たりともなかった。

 だが、あるとき両親が金のことで大ゲンカして、イライラしていた母親に剣道の道具をすべて捨てられた。


 とうぜん、道場にも辞めると連絡していたらしい。

 学校から帰ったら、剣道を失っていた俺は、大きく心をゆさぶられて…名前も分からないその刺激(しげき)が、忘れられなくなった。



 それから、他人が真剣にやっていることを(こわ)すのが快感になったんだが…。

 今思えば、そのとき俺を飲みこんだ大きな感情の正体は、悲しみだったのかもしれない。

 今まで、他人にも同じ思いを味あわせて、自分の悲しみやうらみを晴らしていたのだとしたら…幼稚(ようち)すぎて、笑えるな。