うん、とは言えなくて、眉を下げながら目をそらした。
「ごめんね、俺が、本当はこんな人間で。長いこと演技してきたけど…どうしても、望羽みたいにはなれなかった」
「…ううん。わたしを守ってくれてありがとう、お兄ちゃん」
お兄ちゃんがずっと、わたしのために、本当の自分を隠して人気者でいてくれたこと。
胸が締めつけられるくらいうれしくて、その気持ちが温かくて、自然と笑みが浮かんだ。
「でも…悪いことは、して欲しくないよ」
「…うん。俺も、雨蓮たちとはもう関わらない」
わたしは眉を下げながら笑って、お兄ちゃんの腕に手をからめる。
「お兄ちゃん。わたしは、どんなお兄ちゃんでも好きだよ。どんなお兄ちゃんも、私の自慢のお兄ちゃんだよ」
だって、お兄ちゃんがやさしいのは変わらないもん。
こんなにわたしのことを思ってくれるお兄ちゃんが、わたしだって大好き。
満面の笑顔を向けると、お兄ちゃんは目を大きく開いて、くしゃっと、うれしそうに笑った。



