「クレープって、もしかして駅前のお店ですか?あたしも一緒に行きたいです!」
「ごめんね、大勢で行くと妹があと回しになっちゃうから。また今度でいいかな?」
「分かりました…今度、絶対一緒に行きましょうね!」
2年生っぽい女の人は、お兄ちゃんにそう言ったあと、ジロリとわたしをにらむ。
あわてて視線を落とすと、にぎやかな話し声に混ざって、その女の人の明るい声が聞こえた。
こっそり、ふぅ、と息を吐き出して、また集まってきた人に場所を空けるため、わたしはうしろに下がっていく。
校門が目の前に来ると、もうお兄ちゃんの周りには二重、三重に人の輪ができて、一切近づけなくなるのが常。
だからわたしは学校につくと、静かにお兄ちゃんから離れて1人で教室に向かう。
お兄ちゃんはそれが気になるみたいで、いつも[ほったらかしにしちゃってごめんね]ってメッセージをあとから送ってくれるんだけど。



