「…栗本さん」
「あ…ごめん、なんの話だっけ」
ふらりと顔を上げた栗本さんは、貼り付けたような愛想笑いをしていて、心の奥に押しこめた傷がよけいに感じられるようだった。
…本当に、これでいいのかな。
弓崎さんの依頼だったとしても…こんなふうに別れる必要ってあったのかな?
お互いの気持ちを話す余地だって、あってもいいんじゃないのかな。
“仕事”には反することになっちゃうけど…。
お兄ちゃんの動画…は、また別の仕事を手伝わせてもらって、そのときに消してもらおう。
心を決めたわたしは、まっすぐに栗本さんを見て尋ねた。
「本当は…別れたくないんじゃないですか?」
「え…」
不意をつかれたような顔をした栗本さんは、くしゃっと顔をゆがめると、そっぽを向く。



