【中】酸いも甘いも、イケメンぞろい。



 堂々とそんなことを言ってくれるお兄ちゃんに、いつも照れちゃう。

 見た目で言えば、お父さんに似たわたしはとりわけ美人でもなくて、“愛嬌(あいきょう)がある”ってよく言われるような顔なんだけど。




「お兄ちゃん!クレープ屋さんは明日でもいいよ」




 歩道からはみ出さないように、うしろに下がったわたしはお兄ちゃんの背中に声をかけた。

 すると、お兄ちゃんは振り向いて眉を下げる。




「だーめ。望羽はすぐにそうやって自分をあと回しにするんだから。僕が望羽と、今日クレープを食べに行きたいの」


「…うん、分かった」




 そんなふうに言われちゃったら、もう明日でいいよ、なんて言えない。

 わたしは、はにかんで笑った。


 お兄ちゃんをさそった女の人は、残念そうな顔をしながら笑って「ありがと~、妹ちゃん」と軽く手を振る。

 わたしは、「いえ」と頭を下げた。