「…それ、誰から聞いたの?」 「お兄ちゃんが教えてくれました…」 未來先輩は顔を背(そむ)けて、眉根を寄せる。 「まったく、茅都(かやと)先輩はいじわるだな…」 ぼそっとつぶやかれた声が、低い、男の人のもので、びっくりした。 未来先輩はすぐに顔の向きを戻すと、にこっと笑って、今まで通り“女の人の声”でしゃべる。 「ちょっとメイクをするだけだから、大丈夫よ。1階のトイレなら他の人もいないし。望羽ちゃんが男子トイレに入るより、いいでしょ?」 「そ、それは、確かに…」