お兄ちゃんが友だちにそんなことを言うなんて。
めずらしいというか、変というか…。
…もしかして。
「お兄ちゃん、あの人たちのこと、あんまり好きじゃないの…?」
「え?…そんなこと、ないよ。ただ、今日初めて会った3人だから」
「初めて?友だちじゃ、ないの?」
「うん」
あれ?そんなふうには見えなかったけど…。
うーん?と首をかしげると、お兄ちゃんは笑ってわたしの手を引いた。
「行こう。望羽のクラスは、次の授業なにやるの?」
「あ、現代社会だよ」
「そっか。僕と予習する?」
「えっ、いいのっ?」
「うん。屋上前の階段でやろうか」
「それだと、お兄ちゃんが教室に戻るの大変になっちゃうよ」
「大丈夫だよ。階段上がっていくほうが大変でしょ?」
3階の渡り廊下を通ってA棟に戻りながら、お兄ちゃんは、にこっとわたしを見る。
わたしも、えへへ、と笑って「ありがとう」と返した。
やっぱり、お兄ちゃんはやさしいな。
ちょっと様子が変な気がしたのは、気のせいだったかも。



