甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

私が言葉に詰まったのを見て、何故か田代くんは優しく笑った。


「分かった。じゃあ、諦める。最後に勇気出せて良かったわ……というか、ここで末永がハッキリ断らない人だったら、多分俺は好きになってなかったわ」


そして、何故か田代くんが私の(てのひら)をペチンとに軽く叩いた。


「いた! え、急に何!?」


「相変わらず世渡り下手だなって思っただけ。マジでド下手」

「急に悪口すぎない!?」

その田代くんの雰囲気は前の……最近の雰囲気が変わるより前の、懐かしい雰囲気だった。


「じゃあ、また明日会社で」


それだけ言って、田代くんは帰っていく。

私は夜の何処か寂しさを含む風を感じながら、田代くんが見えなくなるまでその場を離れることが出来なかった。