甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

「末永、彼氏いるならはっきり言っていいよ」

田代くんの言葉に私はハッと我に帰った。


「違くて! いないんだけど……本当にいないの。でも、付きあいたいと思っている人はいると言うか……」


私の言葉に田代くんは顔を上げた。

「じゃあ、彼氏はまだいないんだ。それ本当?……って、嘘なわけないか。末永が上手く誤魔化せるタイプなわけ無いし」

「急に悪口!?」

「違う、褒めてる」

「絶対、嘘でしょ!」

私がいつもの田代くんの軽口だと思って、笑顔で返した。

でも、田代くんがいつもみたいに呆れながら笑ってくれない。

代わりに「本当に褒めてるよ」と私と目を合わせた。



「末永、俺、間に合わなかったって後悔するのは絶対に嫌」



田代くんがそれだけ言って、私に近づいてくる。

田代くんが近づいてくる時の緊張感は、あの日の……仕事終わりの休憩室の雰囲気と一緒だった。